狐と鍵

狐と鍵

稲荷神社には二匹のお稲荷さんがいます。この稲荷の狐に変わったものがあります。それは鍵をくわえた狐の像です。

例えば神田駿河台の明大や日大のビル群のなかに太田姫稲荷神社という小さな神社があります。こちらの狐は鍵をくわえているのです。

この神社は太田道灌の娘が疱瘡にかかって生死の境をさまよっていたときに京都の一口稲荷神社が小野篁にまつわる縁起により天然痘に霊験があるということで娘の回復をおねがいしたことにより治癒したことから建てられたものだそうです。旧江戸城に建てられたものがのちに城の鬼門に位置するところに移されたということです。

この神社の稲荷は鍵をくわえて太鼓の上で飛び跳ねています。これは鬼門から鬼が入ってこないように守っているものです。飛び狐と呼びます。加えているのは鬼門の鍵だそうです。

鬼門とは北東の方角のことを指します。陰陽道において、この鬼門から鬼が入ってくるとされています。万事忌むべき方角と言われています。

狐が加えている鍵には金運や豊穣の収穫物を守る蔵の鍵という意味があり、また、鬼門に位置しているということで鬼の侵入を守る鍵という意味があるのです。

また、埼玉県にある吹上観音には飛び狐の絵馬が伝わっています。太田姫稲荷神社と同じく、白い狐が鍵を加えて神社の鳥居を飛び越えている絵馬です。この加えた鍵は子宝の鍵という意味があります。